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光の波間(LAK版”天国の階段”)2:竜神貢

貢に2話目を書いてもらったのであげておきますw

ちょっとはカヲアスに進展してましたよwww
では下記からどーぞ。


光の波間(LAK版”天国の階段”)2:竜神貢



2





なんなのかしら、この気持ち。

レイは独りぼっちの帰り道、そんなことを考えていた。傘の柄を持つ手に自然と力が入る。

私は雨の中。あの子は車の中。
小さな頃からずっと、苦労してきた。今まではそれが苦労だなんて思わなかったけれど、アスカに会って分かった。あのコは恵まれている。
私が冷たい水で茶碗を洗っていた時、あのコは家政婦の作ったデザートを食べていた…。

レイは独りで冷たい雨の中を歩き続けた。





「アスカ、ちょっとこっちに来なさい」

珍しく、ゲンドウが不機嫌な声でアスカを呼び寄せた。
アスカは不安を覚えつつ、部屋から出て螺旋階段を下りた。

「な、なぁに?パパ?」

居間にはユイとゲンドウがいて、レイが床に蹲っている。アスカはそれを訝しげに見下ろした。ゲンドウは腕を組み、アスカを一瞥すると言い放った。

「アスカ。レイを打ったそうだな?」
「はぁ?そんなことするわけ…」
「そうなの、お父様。私、何もしていないのにアスカが打つの」

アスカは突然のことに事態が飲み込めなかった。無表情でありもしないことを言うレイに驚いた、というのが正直なところだ。実際、今日はカヲルの車で送ってもらって家についてからはずっと部屋にいたのだ。

「ちょっとアンタ!なに無表情でありもしないこと言ってるのよ!」
「私も見たわ。この子がレイを打ったのよ」
「はぁ?」

賛同するユイにも驚いたところでゲンドウがユイに乗った。

「アスカ。なぜ仲良く出来ないんだ?」
「パパまで!私がレイを打つと思っているの?」

アスカはあまりの怒りに卒倒しそうになった。

「付き合ってられないわ!」

走って部屋に戻る階段の途中で、シンジとすれ違ったが無視して部屋に飛び込む。怒りのやり場がなく、枕を壁に何度も叩きつけた。中から羽が飛び散る。

「パパまで一緒になって!なんなのよ!あの親子!」

アスカはまだ知らなかった。これがほんの始まりだということを。




翌日。
朝からアスカはうんざりした。登校してみると下駄箱の中から上靴が消えていた。やむなく来客用スリッパを使用して教室に行くと椅子の上に画鋲。イラついてレイを見ると、いつも通り頬杖をついて外を眺めている。張り合うのもバカらしくなり、アスカは黙って画鋲をゴミ箱に捨てた。

放課後、家に帰るのも気が進まないが行くところもない。大きくため息をついてドアを開けると、ユイが仁王立ちでアスカを出迎えた。綺麗な笑顔で微笑んでいるのが逆に恐ろしい。

「アスカ。あなた、学校でもレイに嫌がらせしてるんですって?」
「してないわよ」
「上靴を隠したり、椅子に画鋲を置いたり…姑息なマネするのはやめなさい」
「してないわよ!全部逆!私がレイにやられてんのよ!」
「ウソつくのはやめなさい」
「ウソじゃないわよ、オバサン」

バチーン!

アスカは一瞬、何が起こったのか理解できなかた。左頬がアツくなってきて、ようやく頬を叩かれたのだと気付いた。目の前のユイはニコニコと笑顔を絶やさない。

「誰がオバサンですって?今度言ったら殺すわよ?」
「……」

一体、何が起こっているのか。アスカにはよくわからなかった。




その夜、アスカはゲンドウの書斎を訪れた。
ゲンドウはいつも通り「死海文書」と書かれた古文書を熱心に読み耽っていたが、アスカを書斎に招き入れてくれた。父親と二人きり。今しかない。レイとユイに嫌がらせをされている、という事実を伝えたいと思うのだが、言葉がなかなか出てこない。

「ねぇパパ。パパは再婚して、幸せなの?」

ようやく、アスカは小さな声でそう尋ねた。なんとも遠まわしな言い方に自分に腹が立つ。

「そうだね。今、世界で一番幸せなのは私なんじゃないかって思うよ」
「そ、そう……」

実際最近のゲンドウは幸せそうな顔を見せる事があるのを、アスカは知っていた。

ここで私が、この生活が辛いって言ったらパパの幸せはなくなる…。パパはこれまでママが死んでから何年も、大変な思いをしてたんだから…やっと幸せだって思える日が来たのに、私がそれを壊すことになるなんて。

「アスカはどうだ?お母さんや兄妹ができて?」
「―もちろん、幸せだわ。ありがとう、パパ」

咄嗟に、答えてしまっていた。必死に笑顔を作る。

大丈夫よ、アスカ。留学するまでの我慢だもの。相手にしなければ、向こうだって飽きるわ。

アスカはそう自分に言い聞かせた。





家に帰るのが苦痛になったアスカは、以前よりも入り江の岩の上に行く事が多くなった。カヲルがいてもいなくても、雨の日以外は大抵岩の上に膝を抱えて座っていた。
岩に打ちつける小波の音を聞きながら、夕陽が落ちていくのを眺めるのはアスカの日課になった。

「アスカ、最近元気がないよね?」
「そぉ?そんなことないけど?」

カヲルに泣き言を言うつもりはなかった。カヲルはちょっと不満げに、呟いた。

「…それならいいけど。何か悩みがあるなら言いなよね?例えばあのシンジくんにノゾキとかされてないかい?」

ぶっ!

アスカは吹きだした。シンジもアスカやカヲルと同じ学校に編入し、カヲルとは同級生になっていた。
そういわれてみれば、シンジは家でも影が薄い。いつも部屋にこもっていて、レイやユイとも仲が良いようには見えなかった。

「シンジなんか、一週間以上喋ってないわ。アイツいつも部屋にこもっているもの」

そういう私もだけど、とアスカは心の中で付け足した。互いに部屋にこもっていたら会話する機会も少ないというものだ。

「そうなのかい?シンジくんってよくわからないカンジだから…アスカとひとつ屋根の下に住んでいるんだから、もっと喜ぶべきなのにね」
「え…」
「ボクはシンジくんが羨ましいけど?」
「…ウチなんかに住めたって、いいことなんかないわ」
「そうなのかい?」
「…早く留学したい」
「そうだね」

カヲルと二人の時間には癒される。アスカはこのひとときだけ、本当の自分に戻れる気がしていた。







月日が経つのは早いもので、五人家族になって数ヶ月が経過したある日、アスカはいつもの岩の上にいた。既に夕陽は落ちきり、新月の夜空が広がる海辺は闇に近い。うす曇の空は星々のささやかな輝きさえも覆い隠し闇を一層深くする。寄せては返す白波すら闇に溶け込む。

もう家には帰りたくない。

アスカは心底思っていた。既に血を分けたゲンドウすら、アスカの味方ではなくなっていた。レイとユイの差し金で、ゲンドウはアスカの留学を許さない気持ちになっていた。
いや、許さないわけではない。まだ早い、と言うのだ。

「パパなんてキライ…」
「見つけた」

突然、足元から声が響いた。カヲルの声はいつも通り明るい。軽々と岩の上に飛び乗ると、カヲルは三角座りしているアスカを後ろから抱きかかえた。

「なに?お父さんとケンカしたのか?」
「なにしにきたのよ」
「アスカが家に帰ってないって聞いて、ね。ここだと思った」
「余計なお世話よ」

そう言いながらも、後ろから包み込んでくれるカヲルの体温に安らぎを感じてアスカは目を閉じた。寄せる波音とカヲルの体温はアスカが今、一番好きなものなのだと思い知った。

「聞いたよ、アスカ。留学のこと…」
「…もう最悪」
「先に行って待ってるよ」
「…ウソ」
「ウソなもんか。アスカのお父さんは来年ならいいって言ってくれた。一年だけ、お互い我慢するしかないね」
「一年…」

気が遠くなりそうだ、とアスカは思った。この数ヶ月でさえ必死だったのに、一年も先延ばしになるのか。

カヲルの細く長い指が、そっとアスカの腕を掴んだ。

「待てない…待てないわよ!そんなに…」
「アスカ」
「無理よ!フィフスだって、待てないわ。きっと留学先でかわいい彼女でも作って、私のことなんて…」

アスカは腕を強く後ろに引かれるのを感じた。バランスを崩して倒れかけたところにカヲルの顔があって気付いたら唇が触れていた。
寄せる波の音しか聞こえない。雲間から覗く弱々しい星明りの中で、カヲルはぎこちなく唇を離した。呆然としているアスカをそっと抱き寄せ、耳元で囁く。

「ボクはアスカだけだよ」
「……」
「ずっと、待ってる」

アスカはゆっくりと口を開いた。

「ズルイ…こんなことされたら、私は待てないなんて、言えないじゃない…」
「…ごめん」

このまま世界が終れば、いっそ幸せなのに。

アスカは星明りの中でぼんやりとそう思った。














つづく
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