Innocent(創作小説)葛西えま
創作のもので前に書いたものを移動させてきました。
2次創作ではなくオリジナルなので、興味ない方はスルーでどうぞ。
世の中にこんなきれいなものがあるんだって初めて思ったのは、心の中を覗いたとき・・・
穢れの無い澄んだ紺碧の瞳に映るのはなんだろう?
ほんの少しでいいからその一部になりたい。
ほんの少しでいいから存在価値になれればいいって思う。
高層ビルの間に木々の生い茂る公園がある。
昼にはランチを取りにここに来る人もいれば、飼い犬と散歩に来る者もいる。
健康を維持するためにジョギングのコースにする人もいれば、ただ昼寝をしにやってくる者もいる。
夏には噴水の水で涼をえにやってくる者もいる。
たくさんの人間が集まるこの場所やってくるのは週に数回。
決まって夕方の4時から5時の間。
ビルの間にあるこの場所が唯一気に入った場所・・・
夕方になるといつものように路上ライブが始まる。
それを目当てに10代や20代の人々がどこからか集まってくる。
茜色に染まる頃ベンチで行き交うその人々を空の思考と目で眺めていた。
両の耳からは音楽という雑音が耳を通り抜けるが特に気に止まる音は無い。
空虚に支配される。
たくさん人が居ても一人になれる。
たくさんの人がいるからこそ独りを感じる。
16年間独りが好きという訳でもないのだが、独りでいるのが当たり前ですごく自然だった。
物や何かに今までもこれからも影響も執着も持たないって思っていた。
「・・・・・・」
いままで空だと思っていた世界にひとつの音が響いてきた。
その音を探して両の眼球が左右に動く。
「・・・これ、どこから?」
ベンチから立ち上がると無意識に歩き出した。
トクトクと鼓動が弾み出すとそれを探さなきゃいけないような感覚に落ちた。
今までなかったとても心地良い気分。
キョロキョロと見渡すと探していた音に辿り着く。
ギターを弾く長く綺麗な指先に最初に目を奪われると、
周りを気にもせず下を向きただひたすら弾きたいように弾く姿をじっと見つめた。
その視線に気がついたのかそうでないのか彼は頭を上げた。
長く不揃いな前髪の間からのぞく紺碧の青に心惹かれる。
一瞬目線が交差すると、彼の唇から何かが聞こえてきた。
初めて耳に届いた歌。
自分の唇が微かに震えているのが分かり、指先でそれを確認した。
何もなかった自分の世界に色がついたような感覚。
痺れたような・・・
落ち着かなくて、心を掻きむしられた奇妙な感じ。
曲が終わりしばらくすると周りから人が消え、そこには自分と彼だけだった。
「何かオレに用?」
「・・・用とかじゃ・・・ないけど・・・」
どう人と話せばいいのかわからない。
けど・・・ここを離れたくない。
ただ・・・
「帰るけど。どうする?」
「・・・え?」
「一緒に行く?」
今まで女の子だってあまり話をしたことがないのに、男の子と話すのだってなかった。
「行くの?行かないの?」
ギターをケースにしまうと薄いコートを羽織り、
1度靴紐を結ぶのにかがむとそのまま床にあったケースを肩に担いだ。
前髪が目にかかりそうになると1度髪をかき上げ、空いていたほうの手を差し出してきた。
その長い指先を見ると、その手を無意識にとってしまった。
「つかまえた」
自分にむけて発された声もドキドキと胸を躍らせる。
街中で手を引かれながら無言で歩くこと数分。
横にいる顔を見上げると肩で髪が動いているのが目に映る。
目のすぐ下にある泣きホクロをじっと見た。
「どこ見てんの?」
「あの目の下・・・」
「ホクロ?」
「うん」
ホクロを空いている方の指でさすと口からため息がこぼれた。
「あんま見んなよ」
「ごめんなさい」
「やっ・・・謝ってほしくって言ったんじゃないって」
少し頬が赤くなったように見えると。
「さっきからじっと見られて恥ずかしいんだって・・・」
「・・・うん、ごめん」
握られた手が少し汗ばんでくると、手が離れた。
「こっちもゴメン。ずっと手ぇ握って・・・た。握られてそのヤだったよな?」
「うん・・・、ううん!!そんなことなかった」
自分がどんな表情で言ってるのか検討がつかない。
イヤな顔してないだろうか?
でも相手の顔は笑顔であったから変な表情はしていないのだろう。
「って言うか、オレ名前とか言ってないよな?」
「あ・・・名前」
名乗り合わずに30分近くを過ごしていた。
「榎本蒼、一応高校生ってやつ」
「・・・木島絵梨、わたしも高校行ってる」
「うん、分かってた。制服で」
そう言うと蒼はスカートのあたりを指差した。
こんなに人と話をするのって初めてかも知れない。
絵梨はそう思うと笑った。
携帯の音が二人の間から鳴り響いた。
「ちょっと、いい?」
頷くと蒼はその電話に出た。
俯きながら話をしている。
目だけがこちらをたまに気にしているのが分かる。
髪の間から覗く不思議な目の色。
そういえば日本人みたいなのに瞳青いんだ。
お店のショーウインドーのガラス越しに映る自分達の姿を待つ間眺めた。
蒼はちょうど頭1つ分高い。
前髪が長くて後ろ髪は肩の襟にかかってるくらい。
そんな感じで見ているとガラス越しに目があってしまった。
「わかった。それじゃあ、1時間後に」
気になったのか?急いで電話を切ったようだ。
意識して自分の左手の腕時計を見る。
「8時だね」
2時間近く一緒にいたらしい。
長いようで短い時間。
「帰らなきゃ・・・」
帰ろうと思ったわけでもないけれども、言葉にした。
「もう少し無理か?」
無理じゃないけど・・・
「・・・うん。それに約束?あるみたいだし」
これ以上一緒にいたら離れるのがイヤになりそうだった。
誰かにそんな気持ちになるのは怖い気がした。
独りがイヤになるから?
もしかしたらさっきの電話とか付き合ってる恋人かもしれないし。
「彼女とか・・・」
居心地の悪くなることをつい出してしまう。
「さっきの気にしてんだ」
「別に気にしてる訳じゃないけど」
「双子の妹」
「双子?」
「うん。オレ双子でその兄貴なんだ」
「蒼と同じ顔の女の子がいるの?」
「同じ顔・・・だな」
言いながら思い出したのか蒼が笑い出した。
「片割れ見にくる?」
返事も待たずに蒼は絵梨の手を再び掴むと、オレンジ色の街頭の歩道を歩き出した。
つづく。
2次創作ではなくオリジナルなので、興味ない方はスルーでどうぞ。
世の中にこんなきれいなものがあるんだって初めて思ったのは、心の中を覗いたとき・・・
穢れの無い澄んだ紺碧の瞳に映るのはなんだろう?
ほんの少しでいいからその一部になりたい。
ほんの少しでいいから存在価値になれればいいって思う。
高層ビルの間に木々の生い茂る公園がある。
昼にはランチを取りにここに来る人もいれば、飼い犬と散歩に来る者もいる。
健康を維持するためにジョギングのコースにする人もいれば、ただ昼寝をしにやってくる者もいる。
夏には噴水の水で涼をえにやってくる者もいる。
たくさんの人間が集まるこの場所やってくるのは週に数回。
決まって夕方の4時から5時の間。
ビルの間にあるこの場所が唯一気に入った場所・・・
夕方になるといつものように路上ライブが始まる。
それを目当てに10代や20代の人々がどこからか集まってくる。
茜色に染まる頃ベンチで行き交うその人々を空の思考と目で眺めていた。
両の耳からは音楽という雑音が耳を通り抜けるが特に気に止まる音は無い。
空虚に支配される。
たくさん人が居ても一人になれる。
たくさんの人がいるからこそ独りを感じる。
16年間独りが好きという訳でもないのだが、独りでいるのが当たり前ですごく自然だった。
物や何かに今までもこれからも影響も執着も持たないって思っていた。
「・・・・・・」
いままで空だと思っていた世界にひとつの音が響いてきた。
その音を探して両の眼球が左右に動く。
「・・・これ、どこから?」
ベンチから立ち上がると無意識に歩き出した。
トクトクと鼓動が弾み出すとそれを探さなきゃいけないような感覚に落ちた。
今までなかったとても心地良い気分。
キョロキョロと見渡すと探していた音に辿り着く。
ギターを弾く長く綺麗な指先に最初に目を奪われると、
周りを気にもせず下を向きただひたすら弾きたいように弾く姿をじっと見つめた。
その視線に気がついたのかそうでないのか彼は頭を上げた。
長く不揃いな前髪の間からのぞく紺碧の青に心惹かれる。
一瞬目線が交差すると、彼の唇から何かが聞こえてきた。
初めて耳に届いた歌。
自分の唇が微かに震えているのが分かり、指先でそれを確認した。
何もなかった自分の世界に色がついたような感覚。
痺れたような・・・
落ち着かなくて、心を掻きむしられた奇妙な感じ。
曲が終わりしばらくすると周りから人が消え、そこには自分と彼だけだった。
「何かオレに用?」
「・・・用とかじゃ・・・ないけど・・・」
どう人と話せばいいのかわからない。
けど・・・ここを離れたくない。
ただ・・・
「帰るけど。どうする?」
「・・・え?」
「一緒に行く?」
今まで女の子だってあまり話をしたことがないのに、男の子と話すのだってなかった。
「行くの?行かないの?」
ギターをケースにしまうと薄いコートを羽織り、
1度靴紐を結ぶのにかがむとそのまま床にあったケースを肩に担いだ。
前髪が目にかかりそうになると1度髪をかき上げ、空いていたほうの手を差し出してきた。
その長い指先を見ると、その手を無意識にとってしまった。
「つかまえた」
自分にむけて発された声もドキドキと胸を躍らせる。
街中で手を引かれながら無言で歩くこと数分。
横にいる顔を見上げると肩で髪が動いているのが目に映る。
目のすぐ下にある泣きホクロをじっと見た。
「どこ見てんの?」
「あの目の下・・・」
「ホクロ?」
「うん」
ホクロを空いている方の指でさすと口からため息がこぼれた。
「あんま見んなよ」
「ごめんなさい」
「やっ・・・謝ってほしくって言ったんじゃないって」
少し頬が赤くなったように見えると。
「さっきからじっと見られて恥ずかしいんだって・・・」
「・・・うん、ごめん」
握られた手が少し汗ばんでくると、手が離れた。
「こっちもゴメン。ずっと手ぇ握って・・・た。握られてそのヤだったよな?」
「うん・・・、ううん!!そんなことなかった」
自分がどんな表情で言ってるのか検討がつかない。
イヤな顔してないだろうか?
でも相手の顔は笑顔であったから変な表情はしていないのだろう。
「って言うか、オレ名前とか言ってないよな?」
「あ・・・名前」
名乗り合わずに30分近くを過ごしていた。
「榎本蒼、一応高校生ってやつ」
「・・・木島絵梨、わたしも高校行ってる」
「うん、分かってた。制服で」
そう言うと蒼はスカートのあたりを指差した。
こんなに人と話をするのって初めてかも知れない。
絵梨はそう思うと笑った。
携帯の音が二人の間から鳴り響いた。
「ちょっと、いい?」
頷くと蒼はその電話に出た。
俯きながら話をしている。
目だけがこちらをたまに気にしているのが分かる。
髪の間から覗く不思議な目の色。
そういえば日本人みたいなのに瞳青いんだ。
お店のショーウインドーのガラス越しに映る自分達の姿を待つ間眺めた。
蒼はちょうど頭1つ分高い。
前髪が長くて後ろ髪は肩の襟にかかってるくらい。
そんな感じで見ているとガラス越しに目があってしまった。
「わかった。それじゃあ、1時間後に」
気になったのか?急いで電話を切ったようだ。
意識して自分の左手の腕時計を見る。
「8時だね」
2時間近く一緒にいたらしい。
長いようで短い時間。
「帰らなきゃ・・・」
帰ろうと思ったわけでもないけれども、言葉にした。
「もう少し無理か?」
無理じゃないけど・・・
「・・・うん。それに約束?あるみたいだし」
これ以上一緒にいたら離れるのがイヤになりそうだった。
誰かにそんな気持ちになるのは怖い気がした。
独りがイヤになるから?
もしかしたらさっきの電話とか付き合ってる恋人かもしれないし。
「彼女とか・・・」
居心地の悪くなることをつい出してしまう。
「さっきの気にしてんだ」
「別に気にしてる訳じゃないけど」
「双子の妹」
「双子?」
「うん。オレ双子でその兄貴なんだ」
「蒼と同じ顔の女の子がいるの?」
「同じ顔・・・だな」
言いながら思い出したのか蒼が笑い出した。
「片割れ見にくる?」
返事も待たずに蒼は絵梨の手を再び掴むと、オレンジ色の街頭の歩道を歩き出した。
つづく。
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