2015.03.06

甘くそしてほのかに苦い気持ち。10話目:葛西えま

すごく久々になるカヲアスのSS。
2年くらいか?笑
どう完結させるか考えてたやつすっかり忘れたよー。あはは。\(^o^)/



では。みてやろうという人は下記へ。






残された鞄のひとつを持ちカヲルは葛城三佐の住むマンションの前に立っていた。

入り口にある街灯の明かりがマンションを照らすと何人もの住人がカヲルの横を通り過ぎていった。
こうやってただぼうっと突っ立って小一時間が経つ。

マンションを何度か見上げるとまた俯いて意味もなく足元を見ていた。そんな事をしていると知った声がカヲルに話しかけてきた。

「カヲル君こんなとこで突っ立ってどうしたの?」
少し前に着いたシンジは心配気にカヲルに声をかけてきた。
「シンジ君か…」
カヲルの青白い陶器のような肌にオレンジ色の街灯の光が当たる。
少しどこか元気のない顔だが相変わらずの笑みをシンジに向ける。
「これをね持ってきたんだ」
忘れていった鞄をシンジに手渡す。
どうかな時間があるようならうちに寄って行く?とシンジが聞いてきた。
誘いを断る理由もないものだからカヲルは寄らせていただくよ、と答えた。





葛城家に入るとここで生活している住民の香りが鼻腔に入った。
シンジ君の香りに葛城三佐の香り。アスカの香りはなく彼女がここにいないことがすぐにわかる。

「カヲル君どうしたの?上がらないの?」
振り返るシンジは居間の明かりを点けるとドアの横からヒョイと顔を出した。
「上がらせてもらうよ」
靴の紐を解き白いハイカットのシューズを脱ぎ揃えるとカヲルは居間の方へ足をすすめた。
持っていた革の鞄を床に置くと、シンジが飲みものでもどうかなとすすめてきた。
コーヒーか紅茶かお茶…
あ、ビールは飲まないか、と、笑い混じりにカヲルにすすめる。
じゃあ、コーヒーをいただくよとカヲルは答えるとシンジとは反対側のテーブルの前の椅子にゆっくりと座った。
手慣れたふうにコーヒーを淹れるシンジの背中を見ながらも、住人がいない部屋の方をカヲルは見やった。

一度それに気づいてシンジが振り返るが、なにも聞かずにテーブルに二脚マグカップを置いた。
一つをカヲルに手渡し、一つを手元に置くとシンジもカヲルに向き合うように椅子に座る。


なにもお互いに言葉を交わさず沈黙が続いた。
いつもならシンジは意味もない話しでも沈黙に耐えられずするのだが、今日に限って話す言葉がすぐに見つからず出てこなかった。

アスカとの出来事があってから、カヲルとはなんだか話しがしずらくなったかも知れない。
アスカが暫くカヲルのとこに転がりこんでから、カヲルとどういう関係になっていたかシンジは薄々気づいていた。
それにアスカはアスカで今日呼び出てきたと思えば、なんだか突然出て行くというし…
なにか2人の間であったのだろうはずだからそれが頭にチラチラして、他の話しをしようと考えても2人の事に戻りついてしまうのだ。
何があったのか知りたいような、知りたくないような。
そんな考えがぐるぐるしていると、最初に沈黙を破ったのはカヲルだった。

「シンジ君はその…アスカとどんな話しをしたんだい?」
「アスカ?あ、ああ。今日聞いた話しかな?カヲル君はアスカから聞いてないの?」
「出て行くことなら…その少し聞いたかな」
カヲルはコーヒーカップを手に持つと、乾いた唇を潤すために一口それを飲んだ。
コーヒーを飲むこともなく時間だけ流れたものでカヲルが口に含む頃はすでにそれは生温くなっていた。
「そうだね。アスカ…出て行きたいってミサトさんに伝えたらしいよ。ミサトさんはミサトさんでまだ検討するから時間をちょうだいとアスカに言ったんだけど。アスカはここにどうしてか帰りたくないってごねて、仕方ないから考えがまとまるまでは委員長のとこで泊まらせてもらうって事になったんだ」
「そうなんだ。洞木さんのうちに…か」
アスカが何処に行っていまどうしてるか気になっていたカヲルは安堵した。
「カヲル君には委員長とこだっていってなかったんだ」
「どこにいるか分かってるならいいさ」



シンジとカヲルがアスカの話しをしていると途中で電話が割って入るように鳴った。

シンジが椅子から立ち電話を取ると、カヲルは残りのすっかり冷めたコーヒーを一気に飲み干した。

「あ、うん。今?ミサトさんはまだ帰っていないよ」
カヲルをちらりと見ると、シンジはそのまま話しを続けた。
「なにいま下なの?荷物?うん、分かった。じゃあ、部屋のベッド脇に置かれた鞄だね。分かったよ。持って降りるよ」
会話の相手はアスカだったのはカヲルにも話しの流れでなんとか分かった。
「アスカの荷物をちょっと下まで持って行くから暫く待っててくれる?」
「あのさ、シンジ君が良ければボクがアスカにその荷物を渡しに行ってはだめかな?」
「でも…アスカはボクに持ってくるようにって…」
「お願いだよ。出来たらアスカと話したいんだ」
一旦は断るつもりだったが、アスカとカヲルがどんな関係でちょっと気まずい感じなのかとか、色々大人のような込みあった事情があるのだろうかとか、だったら…だったら…
ぐるぐる考えていたが、取り敢えずは言うようにしてあげるべきかも?と、思い直しいいよ。と、シンジは答えた。





荷物を持つとエレベーターで一階に降りると、街灯に明るい赤茶色の髪が照らされ、見慣れたスラリと綺麗な後ろ姿が目に入ってきた。

アスカは通りの向こうを向いていたから、振り向く迄はカヲルでなくシンジが来たのだと思っていた。だから怒ったような表情でカヲルを見た。

「な、なんで、アンタがいるのよ」
「ごめん。シンジ君に頼んだんだ。キミの荷物を持って行くの代わって欲しいって」
驚いてはいたが、溜息を吐くといつものような喧嘩ごしな口調でアンタに頼んでないのに!馬鹿シンジの奴…と毒ついた。
「あのさ、色々考えたんだ」
カヲルの話しなんか興味ないわ
!というように、話しも聞かず荷物をカヲルから奪いとるよう引っ張った。
だがカヲルも鞄を離さないように、アスカの引っ張るその手を離さないように掴んだ。
「なにすんのよ!バカ離しなさいよ!」
「あのさ、考えたんだけど葛城さんところ出て行きたいんだろ?だったらボクのとこに来たらいいじゃないか」
「はあ?」
「ここにいたくないなら無理していなきゃいいし、だったら一緒に」
「アンタ本気でそれ言ってんの?」
「本気だよ」
カヲルはバカバカしいくらい、曇りのない目を向ける。そんなカヲルの言葉に思わずアスカは声を出し笑い出した。
バカじゃないの?!
アンタ思春期の男女が一緒に住むとかありえないから。
単純なカヲルの考えが可笑しくて堪らなくなり、ありえないありえないからとアスカは笑いながら腹を抱えうずくまった。
「常識から言って無理だし、借りにも言ってみたとして絶対に無理ってミサトもいうわよ。それにそれによ?アンタと住む気なんてないわよ」
クックと息を吐きながらアスカは笑いを止めようとするがなかなか笑い出してとまらなかった。
「真剣に考えたんだよ」
カヲルが笑みもなくいつにない真剣な顔で呟く。
「シンジ君のことさ…好きなんだって分かってるし、ボクだって好きだよ。シンジ君のことだけじゃなくキミのことも好きなんだって分かったんだ」






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